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質問 信玄は内憂外患の極みたる戦国乱世をどう解したのか。  2007.3.2

<回答>

 孫子は、この「内憂外患」への対処法について『利に雑えて、而(すなわ)ち務め信(の)ぶ可きなり。害に雑えて、而ち憂患い解く可きなり。』<第八篇 九変>と論じております。

 因みに言えば、現行孫子は「患(うれい)」と作りますが、竹簡孫子には「憂患(うれい)」とあります。

 「患(うれい)」は病気・災難を苦にするの意。これに対して「憂患(うれい)」の場合、(内憂外患の語もあるように)「憂」は内を主とし、「患」は外を主とするものであります。

 つまりは、現行孫子に作る「患」の一字のみより、竹簡孫子にあるがごとく、「憂患」の二字として「うれい」と読んだ方が事物の内容を正しく反映しているということであります。

 それはさておき、(孫子に心酔していた)武田信玄の戦国乱世における内憂外患への対処の仕方は、(事の広狭大小は問わず)現代に生きる我々にも大いなる勇気を与えてくれるものであります。


1、天下戦国の世であれば「敵に勝ちて強を益す」ことが肝要。

 簡単に言えば、天下戦国という逃れる術なき世であれば、この状況を思い切って活用し、領国を富まし領民を安んずる道を徹底して追及すべきであるということです。

 その答えが、(座していれば必ず他国から攻撃を受けて滅ぼされること必定ゆえ)侵略される前に、他国に打って出てその領地や富を奪いとり、それによって領国の発展を図り、領民を富まそうとするものであります。

 視点を変えれば、まさに無政府状態たる戦国時代の戦争は、やりようによっては大変に儲かる事業(戦争ビジネス)のようなものであり、大いなる魅力があったということであります。

 この場合、最も肝要なことは、戦争には絶対に負けないこと(敗北すれば元も子も無くなること必定である)、一枚岩のごとく一致団結した領国体制を維持すること(下克上の世にあっては敵は外部よりもむしろ内部に多い。苦労して外敵に勝っても、内敵に易々と滅ぼされたのではこれまた意味がない)の二要件であります。

 害に利を雑え、利に害を雑え、循環往復して尽きることなき両面思考を極限まで追求し、対立矛盾する事物を見事に統一調和させたのが信玄の兵法と言えます。

 その結果、信玄は(謀攻の基たる他国の内部情報収集の巧みさゆえに)足長坊主の異名を取り、その軍団は戦国最強を謳われ、武道の何たるかを知る天下の士はこぞって信玄の旗下で働きたいと切望したのであります。

 徳川家康の「欣求浄土」は言わば「反戦国・脱戦国志向」でありますが、信玄の立場からすれば、「心頭滅却すれば戦国の世もまた自ずから涼し(楽しい)」といった心境であったと思料されます。


2、内憂外患も考えようによっては自己研鑽の材料となる。

 ことの善し悪しはともあれ、戦国という地獄もやりようによっては(面白おかしく住みなせる)極楽のごとき状況に転化できることを信玄は教えたものとも言えます。

 言い換えれば、脳力開発の権化と化して苛烈な戦国の世を駆け抜けたのが武田信玄の生き様であったということです。

 いずれにせよ、『利に雑えて、而(すなわ)ち務め信(の)ぶ可きなり。害に雑えて、而ち憂患い解く可きなり。』<第八篇 九変>の言は極めて意味深長であり拳拳服膺すべきものであります。


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