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質問 「子、怪力乱神(かい・りき・らん・しん)」を語らず  2007.10.11

<質問>

 「今年は厄年に当たります」と言われれば、どうしても、憂鬱になったり、不安がったり、心もそぞろになる、というのが一般的傾向と言えます。厄年になればこそ、神頼みも結構でありましょうが、もとより、それだけではなく、本当は、人が人たるものとして、自力で厄除けをし、己に降りかかる厄を払う努力をすることこそが大変必要なことであると思います。

 その意味で、孫子兵法を学び実際に活用することは、まさしく厄除けと厄払いを自力で可能とするものであり、厄年になればこそ、神頼みも結構ですが、まさしく孫子兵法を学ぶべきであると考えます。いかがでしょうか。


<回答>

 色々な意味で考えさせられる良いご質問だと思います。ことの性質上、テーマが複雑多岐に絡み合っておりますので、思いつくままに順不同でお答え致します。


1、子、怪力乱神(かい・りき・らん・しん)を語らず。

 言うまでもなく、これは孔子の言であります。「怪」は怪異、「力」は暴力、「乱」は背徳、「神」は鬼神の意です。「力」と「乱」はさておき、一般的に、我々が実際に体験できない、(目に見えない)形而上のテーマたる怪異や神秘的な現象、言い換えれば、霊魂は存在するのか、死後はどうなるかなどについては話題にしなかったと言う意です。

 彼の釈迦もまた、(目に見えない)形而上の14種の問に対して答えておりません。要するに、(あるかないか分からないことを)あれこれ考えいるよりも、現実に起きている今の問題を解決することにエネルギーを注ぐべし、ということであります。

 因みに、孫子はそのような類のものについては、<第十二篇 火攻>で「これを利用すべし」と明快に論じ、現実対応を旨とする兵法家の面目、躍如たるものがあります。

 それはさておき、言われている厄年はまさに怪力乱神(かいりきらんしん)の類に該当するものであり、その意味では(そんな埒もなないことをあれこれ考える時間があれば)現実問題を解決するための孫子兵法を学ぶべきである、ということは道理であります。

 とは言え、厄年なるものは生理的には一つの節目として古来、健康に関する人々の経験則が伝承されているものとも解されます。

 そのゆえに、孫子の曰うがごとく、埒もないオカルト・迷信はたまたスピチュアリズムの類と雖も利用できる側面は確かにあるので、その意味では、例えば健康面などにとりわけ留意することは必要かと思います。


2、人生とは天災・地災・人災の渦中にあるものと心得るべし。

 要するに「一寸先はどうなるか分からない」のがこの世の定めであり、「板子(いたご)一枚下は地獄」なのが生きるということであります。

 その意味では、いつでも死を習うという覚悟を新たにすることが不惑の年と言えるかもしれません。その意味で、徒然草の次の一節は参考になるかも知れません。

 『われらが生死の到来、ただいまにもあらむ。それを忘れて、もの見て日を暮らす。愚かなることは、なおまさりたるものを』


 それはさておき、(天災・地災もさることながら)とりわけ怖いのは、やはり色々な意味での人災であります。その意味では、人里に下りてきて悪さをするツキノワグマなどは怖くないのであり、真に怖いのは(人里に居住する、他ならぬ)人間そのものと言わざるを得ません。

 天・地に優先して、その人間にいかに対処するかを論ずる孫子を学ぶことは、ここでもまた、厄年の憂患(うれ)いよりも優先すべきことであります。


3、「四十にして惑わず」とは、己の真に進むべき道を悟る意と解します。

 (不断の戦いというこの人生においては)何ごとであれ、常に目的・目標を明確にする習慣づくりは極めて重要であります。

 そのゆえに、(これまでの人生を総括すると言う意味においても)戦略・兵法的思考のバイブルたる孫子を学ぶということは不惑の年齢にはやはり意義あることと考えます。


4、神社仏閣の厄除け祈願などの儀式は(見方を変えれば)まさに兵法の最たるものと言えます。

 一般的に言えば、神仏を信ずる人には神仏はいるし、信じない人には神仏はいないということであります。兵法的に言えば、まさにそのゆえに何ごとかを企図しての戦略・詭道が講じられるということになります。

 これを敷衍(ふえん)すれば、そもそも、今や常識と化している厄年の概念そのものが既に兵法かも知れないということであります。

 言い換えれば、(一般的に)日本における宗教は特殊なサービスを提供するビジネスと化しているということです。ビジネスである以上、当然、兵法的な発想が生起することは当然であります。

 ともあれ、人生を賢明に生きるとは、(振り込め詐欺などを引くまでもなく)他人にも、もとより自分にも騙されないことが必須の条件であります。その意味で厄年を契機として孫子を学ぶことはこれまた意義あることと考えます。


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