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質問 孫子を読む以前の問題としてクリアーすべき点について。  2008.12.10

<質問>

 孫子十三篇を繰り返し読んでいて思うのですが、(一般的に)孫子が難解であるとか、しっくりと来ないと謂われたりするところは、実は、自分自身の脳にこびり付いている、言わば悪しき思考習慣に邪魔をされて真の姿が歪んで見えたり、肝心のところが全く見えないというところにその原因があると思います。

 そのゆえに、孫子兵法をきちんと読むには、まず、その以前の問題として自己の悪しき思考習慣たる(欲望や執着に基づく)邪念・雑念の色メガネに気が付き、これを外す必要があるということです。

 と言うのも、実は私も、孫子塾で学ぶまでは、(孫子の捉え方が)私自身の思考習慣で捉える以上のものでは無かったということに改めて気が付かされたからであります。言い換えれば、それ以前は孫子の捉え方が大変に狭く、かつ表面的にゆがんだ形で読んでいたということです。

 このことは、孫子を学ぶに当たって意外と気が付かない盲点であり、しかも、大変重要な問題点である思います。このような理解で宜しいでしょうか。 


<回答>

 まさにご理解の通りであります。そもそも孫子は現実変革の思想・哲学でありますから、例えば、右とか左とか、上とか下とかの固定した原理や絶対的な原則を説くものではありません。いかに現状を打破するかという観点に立てば、もとより、そのようなものが有り得ようはずがないのです。

 言い換えれば「白い猫でも黒い猫でもネズミを獲る猫は良い猫である」ということであります。しかし、ややもすればそのような事の本質を見誤って「白い猫が良い猫だ」、いや「黒い猫だ」などと枝葉末節の見方に囚われ勝ちなのが一般的傾向と言わざるを得ません。

 もとよりこれは、人間の様々な欲望に起因するところの(客観的でない)主観や(気付いていない)偏見・色メガネなどの然らしむものであることは言うまでもありません。

 そのゆえに、(ご質問者さまの言われているように)先ずこれを外すことが孫子兵法を修得するために第一条件ということになります。とは言え、口で言うほど簡単に外せないのが、この(客観的でない)主観であり色メガネであり(気付いていない)偏見なのです。まさに悪しき思考習慣として体に染込んでいるからに他なりません。

 譬(たとえ)えて言えば、幕末における開国か攘夷かという立場の問題と同じです。佐幕派たる既得権益者(体制側)の立場に立てば、つまるところは現状を維持することが(自分たちにとって)一番良い方法なのです。

 然しながら、そのような固定した見解に立脚する以上、その対極にある反体制的な思想、例えば倒幕・開国などいう現状打破の考え方を理解し得ないのは当然のことであります。

 そのような固定した見識に立って、(彼らなりに現状を変革するべく)例えば佐幕派の代表たる新撰組を採用するなど様々な方策を弄しても、つまるところは、新時代の波を乗り越えるに足る適切な策とは成り得ないのです。

 にもかかわらず、そのような事実を直視せず、時代の流れに背を向けようとするのは、偏(ひとえ)に、現状維持派の所以(ゆえん)たる悪しき思考習慣の為せる業であります。言い換えれば、アタマが固い・頑迷固陋ということに尽きるのです。

 このゆえに、幕臣たる立場の勝海舟もついにはさじを投げ、「幕府はもうダメだ」と言わざるを得なくなるのです。

 新しい世界の潮流にどう対処するかという現状打破の観点に立てば、もはや鎖国政策ではどうにもならない、旧来の常識や因習に囚われていてはならないということになるのです。

 その意味では、まさに勝海舟のごとき発想と行動が孫子兵法の思想であり、理論であるということになります。そのような哲学があるからこそ、戦わずして勝つ方策、例えば「江戸城の無血開城」のごとき偉業が実現できたのだと解すべきであります。

 このような意味での普遍的な原理原則は、ひとり佐幕派・討幕派への適用に止まらず、(政治であれ組織であれ個人であれ)その規模の大小・広狭を問わず均しく適用されるものです。まさに吾人が孫子を学ぶ所以(ゆえん)であります。


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