孫子塾塾長 佐野寿龍
(一)なぜ日本人は戦略思考ができないのか
かつて日本には、リーダーの育成システムとして世界に冠たる武士道教育がありました。然しながら明治維新における身分制度の廃止により、武士階級のバックボーンたる武士道教育もまた廃れました。とは言え、その明治の時代は、武士道教育の余光によって領導され、とりわけ日清・日露の両役はその恩恵に預かるところ大であったと謂われております。
その後、世代の交代とともに新たな指導者層として台頭してきたのが、ペーパーテストの優秀者たる学校秀才組です。この指導者選抜の方式は、何よりも機会均等にして公平であり、かつ効率的な側面が大であるため、まさに四民平等社会のシンボリックな存在として歓迎されたのです。
とは言え、武士道教育で鍛えられたかつての武士階級の指導者と、単にペーパーテストにより選抜された新たな指導者層たる学校秀才組とを比べた場合、その資質や能力において歴然たる差があることは否めません。
そのゆえにこそ、本来は、選抜された学校秀才組に対する武士道教育的な本物の指導者教育が行われるべきであったのですが、なぜかそのことは不問に付され、むしろ学校秀才、即ち頭の良い人間、真の指導者なりとの誤った常識が広まったのが実情です。
この拭いがたい学歴信仰社会の悪弊により、日本の学校教育は、究極の人間教育たる武士道教育とはおよそ対極にある、いわゆる偏差値優先的な知識教育に偏向せざるを得なかったのです。かつての武士のごとく、いくら人に範たる立派な人間になっても、それではメシを喰っていけないというのがその情理です。
つまりは『もとより人に範たる立派な人間づくりは必要である。しかしそれは、個々人が学校を卒業してからでも遅くは無い。それよりもまず良い学校に入ること、そして安定した職場に就職することが先決である』との考え方が暗黙の了解であったのです。
問題は、それがその通りにキチンと履行されているか否かということですが、とかく「熱し易く冷め易く」「喉元過ぎれば熱さを忘れる」性癖の日本人には極めて怪しいものがあると言わざるを得ません。 いわゆる一流大学などを卒業すれば、自他ともにそれで人間そのものまでを一人前と評価する傾向が強く、そのゆえに仕事に忙殺されるがままに人間形成とは無縁の生活を送るパターンが多いようです。
つまり、今日の日本人は、問題を解決する上で最も重要な役割を果たすべき総合的人間力は「既に完成されたものとして自己の内にある」と思い込んでいる節が濃厚なのであります。孫子の曰う『彼を知り己を知れば』<第三篇 謀攻>の「己を知る」について全く無知な傾向が強いということです。
(二)実人生の世界を強く生き抜くための真の知恵とは何か
人生は、好むと好まざるとに関わらず様々な問題解決の連続と言わざるを得ません。しかも、その問題たるや、学校教育におけるがごとく「答え」の用意されているものは殆どありません。そこで物を言うのは、いわゆる偏差値の高さではなく、玉石混交の事物の中から本質を見分け「だからどうするのか」という「答えを出す知恵」、言い換えれば、困難な状況に直面し、いかに適切な判断が下せるかという脳力であります。
孫子に代表される兵法的思考(戦略思考)とはまさにそのことテーマにするものであり、自ずからそれは、人間的総合力の根幹たる意欲・情熱・勇気・胆力・決断力・統率力・創造力・革新力などの諸要素と密接不可分の関係にあります。この脳力をいかに磨くかが、人間らしくこの人世を生きるための本質であり中心点であります。
孫子に代表される兵法的思考、およびその実践論的体系たる脳力開発は、まさに科学の領域外たる「人間いかに生きるべきか」とその側面たる「人生いかに戦うべきか」をテーマとし、哲学と異なり、具体的にどうすべきかの具体的方法を提示するものであります。
また、宗教のごとく非論理的にただ教義を信ぜよと迫るものではなく、この方法を(通常の意識のもとで)具体的に実践すれば「よりよく生きることができる」「状況に向き合い適切な判断が下せる」と具体的かつ論理的にその理性に訴えるものであります。
つまり、この方法は、行動を大前提とするものゆえに『やったもの勝ちであり、やれば成果は必ず上がる』と言うことです。もとより、やるかやらないかは当人しだいでありますが、本当に成果が上がるものか否かを実証するのもまた当人であります。ゆえにそれはすぐに確認することができるということです。要は、当人に「重い荷物を担ぐ勇気があるか無いか」ということだけであります。
(三)孫子兵法通学講座開講の目的
いわゆる社会人を対象に孫子に代表される兵法思考(戦略思考)、およびその実践論的体系たる脳力開発を学ぶ場を提供するものであります。まさにこの分野こそ、今日の日本社会に決定的に欠けている最重要の問題であり、いやしくも社会人たる者、真摯にこれを追究することが求められております。当ゼミは、今日の大学におけるいわゆる社会人入学、もしくは、社会人大学院的な役割を果たすべく設立されたものです。
(四)通学講座の運営に関する基本的な考え方
戦いの普遍的な原理を論ずる孫子兵法と、その実践論的体系たる脳力開発は、言わば基本ソフト的性格のものです。ゆえに、個別特殊的な個々人の環境条件でこれを具体的に活用して成果を上げるためには、当然のことながら、各種の言わば個別特殊的な応用ソフトを付け足して使うという考え方が必要です。
逆に言えば、適切な応用ソフトの作成やさらなる展開は、基礎的な基本ソフトをきちんと学ぶことにより初めて可能になるという相互関係にあります。 残念ながら、こと孫子兵法や脳力開発の活用に関してはどうもこのあたりの基本的認識が曖昧であり、混同されている向きが多いようです。目的と手段、もしくは戦略と戦術を区別し、混同しないことが肝要であります。
ことの順序から言えば、何事もまず土台部分の整備(基本の充実)が先であり重要であります。よって、当ゼミでは、まず土台部分としての孫子兵法、その実践論的体系たる脳力開発をキチンと学ぶことを中心に据えております。つまり、あくまでも「基本ソフトは基本ソフトとして学ぶ」ということを趣旨とするものであり、個別特殊的な個々人の応用ソフトの作成を論ずるものではないということであります。
具体的活用のための応用ソフトは、あくまでも個々人の属する環境条件に即して当事者たる個々人が個別具体的に創意工夫するのがセオリーであります。而して、適切な応用ソフトの作成やそのさらなる展開は、基礎的な基本ソフトをキチンと学ぶことにより初めて可能になるということであります。
(五)通学講座の内容等について
1、主宰者・講師
孫子塾塾長 佐野寿龍
2、使用するテキスト
(1) サブテキスト
T、孫子兵法(佐野寿龍校註・武岡淳彦監修)
U、脳力開発入門((脳力開発センター) V、脳力開発指針集(脳力開発センター)
(2)メインテキスト
T、初級クラスの場合は、オンライン通信講座〔基礎篇〕第一回から第十二回までのテ キストを使用します。
U、中級クラスの場合は、オンライン通信講座〔応用篇〕第一回から第十二回までのテキストを使用します。
V、上級クラスの場合は、オンライン通信講座〔総括篇〕第一回から第十二回までのテキストを使用します。
3、通学講座開催の日時・時間・会場など
(1)少人数・双方向的教育のいわゆるゼミ形式で行います。
(2)各クラスとも期間六ヶ月、月二回の開講、隔週の土曜日(09:00〜12:00)
(3)会場
日本空手武道会 拓心観道場 埼玉県川口市東川口 2-15-5 TEL:048-294-3489 ※ 案内図は、http://kodenkarate.jp/ 「道場案内」のページを御参照ください。
(4)募集人数
T、8人前後と致します。内容の詳細はメールにてお問合せください。
U、現段階では、随時参加の形をとっております。状況に応じてクラス分け致します。
(5)受講料
月二回の開催で月額六千円。期間は六ヶ月。合計:¥36,000
(六)受講終了後の資格認定などについて
ゼミの所定のカリキュラムを終了され、終了試験に合格された方には、まず「脳力開発インストラクター」、次に「孫子兵法師範」の資格を認定いたします。資格を認定された方は、孫子塾の所定の規約に従い、孫子塾公認の講座を開催することなどが可能となります。
(七)併設する拓心観道場における「古伝空手」及び「琉球古武術」の稽古参加について
可能な方には、上記の通学講座と併せて(孫子の兵法的思想が具現化されている)いわゆる武術としての「古伝空手」と「琉球古武術」を学ぶことをお勧め致します。兵法の修得という意味においては、古武術たる古伝空手・琉球古武術を学ぶことが簡明直截にして極めて有効な方法だからであります。
※【孫子正解】シリーズ・第1回出版のご案内
このたび弊塾では、アマゾン書店より「孫子兵法独習用テキスト」として 【孫子正解】シリーズ・第1回「孫子兵法の学び方」という書名で電子書籍を出版いたしました。ご購入は下記のサイトできます。
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※お知らせ
孫子塾では、孫子に興味と関心があり、孫子を体系的・本格的に、かつ気軽に学べる場を求めておられる方々のために、次の講座を用意しております。
◆孫子オンライン通信講座 http://sonshi.jp/sub10.html ○メルマガ孫子塾通信(無料)購読のご案内 http://heiho.sakura.ne.jp/easymailing/easymailing.cgi
※ご案内
古伝空手・琉球古武術は、孫子兵法もしくは脳力開発をリアルかつコンパクトに学ぶために最適の方法です。日本古来の武術は年齢のいかんを問わず始めることができ、しかも生涯追及できる真なる優れものです。興味のある方は下記の弊サイトをご覧ください。
http://kodenkarate.jp/annai.html
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