創刊号 M・M 『やくにたつ兵法の名言名句』
〔1999/12/24〕
一般社団法人 孫子塾塾長・元ラジオ日本報道記者
佐野寿龍
☆ やくにたつ兵法の名言名句 ☆
『予(よ)は常に多数を以て少数に勝った』
…ナポレオン…
◇ 解説 ◇
戦いは力関係の科学でありますから「勝は大兵にあり」あるいは「大は小より格段に強い」のが原則です。つまり、弱肉強食・優勝劣敗が(立場・心情的にはどうあれ)吹uの掟なのです。弱者に戦法はない、のが厳しい現実なのです。
その力関係の比率について孫子は「4対1」、ランチェスターは「3対1」と主秩vしております。
さりながら、角度を変えて見れば、つまり、弱者も「勝は大兵にあり」あるいは「大は小より格段に強い」の戦法を応用する条件を作ることができれば、強者に勝つことができるという理屈になります。
つまり、全体的な兵力数では劣っていても、決勝点という局所において優勢を演出できればいい、ということになります。
これが、弱者の戦法の筆頭に挙げられる、いわゆる「局所優勢主義」の原理です。
この戦法を得意としていたのが、(孫子兵法に深く傾倒していた)ナポレオンでした。
後に、部将モローが、『陛下は常に少数を以て多数に勝った』と言ったのに対し、ナポレオンは、『そうではない、予は常に多数を以て少数に勝った』と答えたということです。
○ 活用の指針 ○
上記の言は、物事は表面的にではなく、本質的にとらえなければならないことをいうものであり、また、一つの事物には表があれば裏があり、裏があれば必ず表があるのであって、表だけの事物などこの吹uに存在するはずがないことをいうものでもあります。
従って、その物の見方(積極か消極か、能動か受動か)のどちら側の立場に立つかという精神的姿勢を問うものでもあります。
さらにいえば、強い相手と戦って(人生・ビジネスに)勝つためには、いかに相手にその力を発揮させないように工夫するか、をいうものでもあります。その工夫こそが兵法の真髄であると言えます。
「相手に力を出させない工夫」とは、例えば、相撲で言えば、自分は十分な態勢になるが、相手には上手を与えない、あるいは、横に回り横みつを取ることなどではないでしょうか。
リーダーたる者、相手が大敵(例えば大企業)だからといって徒(いたずら)に恐れてはならない、冷静な眼による客観的な思案と工夫があれば、活路は必ず開けてくる、と言うことができます。
この積極的な精神的姿勢(但し、単なる虚勢・強がりはダメ)が作戦(計画)の根底にあることが重要なのです。
ナボレオンの座右の銘は「孫子」であったと伝えられていますが、その孫子は弱者の戦法たる局所優勢主義について『勝は為す可きなり。敵、衆(おお)しと雖(いえど)も、闘うこと無からしむ可し』<第六篇 虚実>と曰っています。
それでは今回はこの辺で。
※【孫子正解】シリーズ・第1回出版のご案内
このたび弊塾では、アマゾン書店より「孫子兵法独習用テキスト」として下記のタイトルで電子書籍を出版いたしました。
※お知らせ
孫子塾では、孫子に興味と関心があり、孫子を体系的・本格的に、かつ気軽に学べる場を求めておられる方々のために、次の講座を用意しております。
※併設 拓心観道場「古伝空手・琉球古武術」のご案内
古伝空手・琉球古武術は、孫子兵法もしくは脳力開発をリアルかつコンパクトに学ぶために最適の方法です。日本古来の武術は年齢のいかんを問わず始めることができ、しかも生涯追及できる真なる優れものです。
孫子を学ぶのになぜ古伝空手・琉球古武術なのか、と不思議に思われるかも知れません。だが、実は、極めて密接な関係にあります。例えば、彼のクラウゼヴィッツは、「マクロの現象たる戦争を、言わば個人の決闘的なミクロの戦いへ置き換えることのできる大局的観察能力・簡潔な思考方法こそが、用兵の核心をなすものである」と論じています。則ち、いわゆる剣術の大なるものが戦争であり、勝つための言わば道具たる剣術・戦争を用いる方法が兵法であるということです。
とりわけ、スポーツの場合は、まずルールがあり、それをジャッジする審判がいます。つまり、スポーツの本質は、娯楽・見世物(ショー)ですから、おのずから力比べのための条件を同じくし、その上で勝負を争うという形になります。つまりは力比べが主であり、詭道はあくまでも従となります。そうしなければ娯楽・見世物にならず興行が成り立たないからです。
これに対して、武術の場合は、ルールもなければ審判もいない、しかも二つとない自己の命を懸けての真剣勝負であり、ルールなき騙し合いというのがその本質であります。つまるところ、手段は選ばない、どんな手を使ってでも「勝つ」ことが第一義となります。おのずから相手と正面切っての力比べは禁じ手となり、必ず、まず詭道、則ち武略・計略・調略をもってすることが常道となります(まさにそのゆえに孫子が強調するがごとく情報収集が必須の課題となるのです)。
つまり孫子を学ぶには武術を学ぶに如(し)くはなしであり、かつ古伝空手・琉球古武術は、そもそも孫子兵法に由来する中国武術を源流とするものゆえに、孫子や脳力開発をリアルかつコンパクトに学ぶには最適の方法なのです。
古伝空手・琉球古武術は、日本で一般的な、いわゆる力比べ的なスポーツ空手とは似て非なる琉球古伝の真正の「武術」ゆえに誰でも年齢の如何(いかん)を問わず始めることができ、しかも生涯追及できる真なる優れものであります。興味のある方は下記の弊サイトをご覧ください。